トラネキサム酸はどんなシミに効く?詳しい効果や副作用、服用方法を解説

「シミに効く」成分といえば、「トラネキサム酸」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし、トラネキサム酸はすべてのシミに対して改善効果を発揮するわけではありません。そこで今回は、トラネキサム酸が持つ効果から、有効性を発揮できるシミの種類、服用による副作用などを紹介します。

トラネキサム酸とは

トラネキサム酸の錠剤イメージ

トラネキサム酸とは、タンパク質を構成する成分の必須アミノ酸リシンをもとに人工的に合成されたアミノ酸の一種です。メラニン色素の生成を抑える作用があることから、厚生労働省により「美白(シミ予防)効果がある成分」として認定されています。

トラネキサム酸はシミ全般における改善効果が期待できますが、なかでも肝斑の治療によく用いられています。安全性が高い薬なので、副作用はほとんどありません。

トラネキサム酸の効果

トラネキサム酸には次の3つの効果があります。

  • 抗炎症作用
  • 止血作用
  • メラニンの生成を抑制する作用

トラネキサム酸にはメラニン生成を抑制する作用以外にも、止血作用や抗炎症作用があります。そのため、肝斑をはじめとするシミ治療以外にも、外科手術の出血対策や耳鼻科での喉の炎症治療、歯科での抜歯後の出血予防など、広く使われています。

抗炎症作用

ウイルスや細菌などによって起きる炎症には、「プラスミン」というタンパク質が関与しています。トラネキサム酸はこのプラスミンの発生を抑制。シミでいうと傷や虫刺され、やけどなどの炎症が原因でできる「炎症後色素沈着」の予防に効果が期待できます。

また、肌が慢性的に炎症を起こしている状態の「肝斑」というシミに対しては、予防だけでなく改善効果も発揮します。

止血作用

炎症に関与している「プラスミン」というタンパク質は出血時にも大きく関係しています。プラスミンは血栓を溶かす作用があるので、活発な状態だとなかなか血が止まりません。そこでプラスミンの働きを抑制する作用を持つトラネキサム酸を使用することで、早期止血が可能になります。

メラニンの生成を抑制する作用

トラネキサム酸には、メラニン色素を作り出す色素細胞のメラノサイトを活性化する、プラスミンやプロスタグランジンの働きを阻害する作用があります。これによりメラニン色素の生成を抑制。ターンオーバーによる排出が追いつかないほどメラニンを過剰生成することがなくなるため、シミ予防として役立ちます。

トラネキサム酸はどんなシミに効く?

トラネキサム酸の内服は次のようなシミに有効性を発揮します。

  • 肝斑
  • そばかす
  • 老人性色素斑
  • 炎症後色素沈着

特に肝斑においては改善に高い効果が期待できることから、治療薬として用いられます。

肝斑ってどんなシミ?

肝斑の写真とイメージ画像

肝斑とは頬骨や額などに左右対称に現れるシミです。比較的大きめなシミが広範囲にわたってできますが、瞼にできることはありません。ホルモンバランスや季節の変化によって濃淡が変わることがあります。

肝斑ができる根本的な原因は判明していませんが、30~40代のホルモンバランスが乱れやすい時期に多く見られることから、女性ホルモンの乱れが大きく関係していると言われています。

そのため、肝斑を予防するには、ホルモンバランスを整えることを心がける必要があります。また、紫外線によって悪化することもあるので、紫外線対策も必須です。

肝斑のシミ改善にはトラネキサム酸の内服が効果的

肝斑は紫外線が主な原因である一般的なシミとは性質が異なり、肌が慢性的に炎症を起こしている状態です。この炎症に対して、トラネキサム酸の抗炎症作用が働くことで、高い改善効果が期待できます。

肝斑の治療においては製剤を内服するのが一般的です。個人差はありますが、早い人であればトラネキサム酸を飲み始めてから4~5週間ほどで効果を実感できるでしょう。

一方でトラネキサム酸の服用は、肝斑や炎症後の色素沈着への改善効果が見込めます。それ以外のシミに対してまったく効果がないことはありませんが、その効果はあくまで予防に留まるため、肝斑や炎症後色素沈着以外のシミを持つ人にとってトラネキサム酸は効果的な改善策とは言えないでしょう。

肝斑を含め、シミの効果的な改善方法を知るためには、種類の特定が先決です。誤った対処法を取ってしまうと、効果がないどころか悪化させるおそれも出てきます。そのため、まずは今あるシミの特定からはじめましょう。自力でシミの特定が難しい場合は、下記のシミ審断をお試しください。種類の特定はもちろん、改善方法についてもアドバイス可能です。

肝斑を含め、あなたのシミを3分で特定します。

トラネキサム酸のリスクや副作用

健康的な人であれば、トラネキサム酸の服用におけるリスクや副作用はさほど心配ありません。ただし、次のような人は注意が必要です。

  • 血栓ができやすい方
  • 血液をかたまりやすくする、もしくはサラサラにする薬を服用している人

これの特徴を持つ人は、トラネキサム酸の「止血作用」が逆効果となるため、服用は控えましょう。特に血をかたまりやすくする「トロンビン」との併用は禁忌となるため、服用している人は必ず医師や薬剤師に申告してください。

また、コレステロール値が高い方やピルを飲んでいる方、喫煙者も血栓のリスクが高まる可能性があるので、医師や薬剤師への申告が必要です。

医療用医薬品と市販薬に違いはある?

トラネキサム酸をはじめ、シミ治療に用いられる内服薬は大きくわけて「医療用医薬品」と「市販薬」の2種類があります。両者にはそれぞれ次のようなメリットとデメリットがあります。

 メリットデメリット
医療用医薬品・個々に最適な薬が処方される
・効果が高い
・保険適用になる場合がある
・副作用に注意が必要
・処方には診察が必要
市販薬・安全性が高い
・手軽に手に入る
・効き目は緩やか
・保険適用外

トラネキサム酸は、医療用医薬品として病院で処方される際には「トランサミン」という薬になります。市販薬のトラネキサム酸と病院で処方されるトランサミンの大きな違いは、成分の含有量にあります。医療用医薬品では主成分のトランサミンのみが配合されているのに対して、市販薬の場合は主成分以外にもさまざまな成分が含有されています。

市販薬は「誰にでも使いやすい」ようになっているため、安全性が高い傾向にありますが、何かあったときは自己責任です。そのため、パッケージなどに記載されている用法・用量は必ず守るようにしましょう。

トラネキサム酸の服用方法

トラネキサム酸の服用方法は肝斑や色素沈着など、目的によって用量が異なります。ただし、1日の上限量は2,000mgまで。間違って1~2錠多く飲んだとしても、ただちに大きなリスクとなることはありませんが、量を多くしたからといって効果が増大するわけでもありません。

血栓リスクが上がるおそれがあるので、医療用医薬品の場合は医師の指示に従って、市販薬の場合はパッケージや説明書に記載されている用法・用量を守って服用するようにしましょう。

治療期間の目安は約1年です。1年を超えて飲み続けても特に問題はありませんが、一定期間飲み続けているにもかかわらず効果が実感できないのであれば、使用を中止し、別の方法を模索することをおすすめします。

トラネキサム酸配合の美白化粧品ならシミ予防に効果を発揮

クリームを手に取る女性の手

トラネキサム酸が配合された美白化粧品*を使用すると、日常的なシミ予防が可能です。トラネキサム酸をはじめとする美白有効成分についてと、予防が期待できるシミの種類を紹介します。

トラネキサム酸はシミを予防できる美白有効成分のひとつ

トラネキサム酸は、メラニンの生成を抑えシミ予防効果が期待できる美白有効成分のひとつです。美白有効成分とは、シミやそばかすの予防に効果があるとして、厚生労働省の認可を受けている成分のこと。認可されている成分は20種類を超え、さまざまな美白化粧品*に配合されています。

美白有効成分にはトラネキサム酸のほか、アルブチンやプラセンタエキス、ビタミンC誘導体などがあります。しかし美白有効成分は、あくまで予防の効果が認められた成分であり、改善効果は期待できないので気を付けてください。

トラネキサム酸配合の美白化粧品により予防効果が期待できるシミの種類

トラネキサム酸が配合されている美白化粧品*を使用することにより、予防効果が期待できる主なシミの種類が以下です。
  • 肝斑:摩擦や紫外線、ホルモンバランスの乱れ等が原因となる
  • 老人性色素斑:紫外線が主な原因となる一般的なシミ
  • 炎症後色素沈着:肌に起こった炎症の跡が色素沈着を起こしたもの
  • そばかす:紫外線が悪化の原因となる

トラネキサム酸は肝斑の治療に高い効果を発揮しますが、そのほかのシミに対しては予防効果に留まります。このようにシミは種類ごとに対策が異なります。自力での判断が難しい場合には、まずはこちらのシミ審断で、種類を見分けることから始めましょう。

*医薬部外品

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トラネキサム酸に関するQ&A

医師に相談する女性

シミの予防や改善が期待できるトラネキサム酸ですが、薬として服用する場合は副作用が気になりますよね。処方薬や市販薬を内服するときの、よくある疑問にお答えします。

副作用はある?

トラネキサム酸の内服で副作用が起きる可能性はきわめて低いですが、全くないとは言い切れません。起こり得る症状としては、食欲不振・吐き気・嘔吐・めまい・下痢・胸焼け・眠気・痒みや湿疹・過敏症などがあります。万が一異変を感じたら服用を中止して医師へ相談するようにしてください。

トラネキサム酸の副作用については、こちらの記事でより詳しく紹介しています。

長期間飲み続けても大丈夫?

トラネキサム酸を飲み続けても、特に問題はないとされていますが、一般的には休薬期間を設けます。心筋梗塞や脳梗塞などの血栓系の病気を持っている人は、トラネキサム酸の服用により血栓ができやすくなる可能性があります。

シミの症状などにより適切な服用期間は変わってきますが、病院ではリスクも考慮して期間を決めているケースが多いです。何らかの持病がある人、妊娠中や授乳中の人などは、事前に必ず医師に申し出て服用を続けて問題ないか相談しましょう。

他の薬と併用しても大丈夫?

トラネキサム酸とピルとの併用はできません。また胃の出血を抑えるトロンビンを服用している人は、血栓リスクが高まるとされています。その他の薬との飲み合わせについても、まずは医師へ相談しましょう。また薬ではないですが、喫煙者も血栓リスクが上がるため、トラネキサム酸は控えた方が良いでしょう。

服用をやめるとどうなる?

トラネキサム酸の服用をやめたら、特に肝斑の症状は戻る可能性があります。トラネキサム酸の服用により抑制されていたメラノサイトの働きが、服用をやめることで活性化してしまうためです。

服用すると白髪が増える?

トラネキサム酸はメラニン色素の生成を抑制する作用を持つため、服用すると「白髪が増える」という噂を聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし、これについて医学的根拠はないので、白髪においては安心して服用していただけます。

色素沈着に効果はある?

レーザー治療後やニキビ後の炎症後色素沈着の予防として処方されることがあるため、一定の効果が期待できます。ただし、その効果は予防に留まります。

市販薬と処方薬の違いは?

内服のトラネキサム酸はOTC医薬品(市販薬)として薬局などでも購入できます。ただしトラネキサム酸の1日量はOTC医薬品で最大750ミリグラム、病院で処方される医療用医薬品で最大2000ミリグラムと決められていて、医療用医薬品の方が含有量が多く高い効果が見込めます。また安全に服用するためにも、診察を受けて自分の症状に合ったものを処方してもらいましょう。

トラネキサム酸以外にも!シミ改善に効果的なその他の成分

さまざまな化粧品とカプセル

トラネキサム酸以外にも、シミの改善に効果が期待できる成分はあります。内服と外用に分けて紹介します。

【内服薬】L-システイン・ビタミンC

L-システインやビタミンCの内服では、老人性色素斑や炎症後色素沈着といったシミの改善効果が期待できます。それぞれ期待できる働きは以下の通りです。

  • L-システイン:メラニンの生成を抑え排出を促す、肌の代謝(ターンオーバー)を正常化する
  • ビタミンC:メラニンの生成を抑えるとともに、還元して無色化する

【外用薬】ハイドロキノン

ハイドロキノンの外用も、老人性色素斑と炎症後色素沈着の予防や改善に効果が期待できます。ハイドロキノンはメラニンの生成を抑えたり、炎症による色素沈着を防いだりする働きがある成分です。トレチノインと併用すると浸透率が高まるので、より効果的とされています。

【化粧品】グリセナジーMK(オゾン化グリセリン)

グリセナジーMK(オゾン化グリセリン)は研究機関において、できてしまったシミ改善の有用性が確認されている成分です。このような先進的な美容成分が含まれた化粧品をスキンケアに取り入れると、毎日のお手入れで老人性色素斑と炎症後色素沈着が改善できる可能性があります。

トラネキサム酸の効果を実感するにはシミの見分けが大事

顔に手を添えて鏡を見る女性

一般的に「トラネキサム酸はシミに効く」というイメージが先行していますが、すべてのシミを改善する成分はありません。トラネキサム酸も同じく、肝斑には「改善」の有効性が高い成分ですが、ほかのシミにおいては「予防」が主な目的になります。肝斑以外のシミ改善をしたい場合は、別の対策を並行する必要があります。

そのためにはまず、今あるシミの特定が必須です。シミの種類が分からないと、最適な対策方法を選ぶことができません。そうなると「いつまで経っても消えない」「むしろ悪化してきた」といった事態になりかねないので、まずは下記のシミ審断を活用して、種類の特定から始めてみましょう。

肝斑を含め、あなたのシミを3分で特定します。

監修医師 コッツフォード良枝 先生 銀座禅クリニック医院長

監修医師 コッツフォード良枝 先生 銀座禅クリニック医院長

・所属学会
日本抗加齢学会/日本麻酔科学会/日本オーソモレキュラー医学会/国際オーソモレキュラー医学会/
国際抗老化再生医療学会/臨床水素研究会/日本東洋医学会正会員
・経歴
2007年山梨大学医学部卒業、その後国際医療センター国府台病院で初期研修。研修後は日本医科大学麻酔科に入局し勤務。
その後大手美容クリニック勤務ののち、一般皮膚科、美容皮膚科などの勤務、院長勤務などを経て現在はGINZA Zen禅クリニック院長。
人が持つ本来の美しさを引き出すことをモットーに、たくさんの患者の様々な皮膚と真剣に向き合う。

- 【 医療法人社団禅銀座禅クリニック】あなたの美のかかりつけ医に