トラネキサム酸の副作用って?飲み続けて大丈夫?基礎知識からリスクまで美容皮膚科医が解説
シミの治療法を調べていると、トラネキサム酸という薬が気になってきませんか?
「効果があるなら試してみたいけれど、自分のシミに効くの? 副作用は大丈夫なの?」と疑問を持った方のため、トラネキサム酸の効果や副作用について皮膚科医が解説します。
お話を伺った医師
はなふさ皮膚科
理事長 花房火月先生
2006年東京大学医学部医学科卒業後、がん研有明病院や東京大学医学部附属病院などでの研修を経て、東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科・助教。2011年、三鷹はなふさ皮膚科を開設の後、東京・埼玉で8院を開院。難治性の皮膚疾患をはじめ、薄毛、シミ・シワなどの美容皮膚科にも取り組む。著書に『やっぱり美人は、かかりつけの美容皮膚科を持っていた』など。
トラネキサム酸とは?基礎知識と効果について
皮膚科領域では肝斑の治療薬として有名ですが、止血作用や抗炎症作用があり、外科手術の出血対策や、耳鼻科での喉の炎症治療、歯科での抜歯後の出血予防など、広く使われています」
トラネキサム酸が炎症や出血に効くメカニズム
出血したときにはフィブリンという成分が生成され、止血効果を発揮しますが、血液中には普段血液が固まらないよう働いているプラスミンが存在しています。トラネキサム酸は出血時、そのプラスミンの作用を抑制することで止血効果を高められます。
炎症やアレルギー症状にもプラスミンは関係しており、そのはたらきを弱め、症状をおさえるために、トラネキサム酸の治療薬が使われます。
皮膚科ではシミ治療にも使用される
日本ではさらに、肝斑の治療にトラネキサム酸の飲み薬や塗り薬が使われます。
肝斑の治療に使われるのは、シミの元となるメラニンの生成にもプラスミンが作用しているため、プラスミンのはたらきを抑制することでシミの発生をおさえられるからです。
どんなシミにもトラネキサム酸は有効?
老人性のシミの場合はレーザー治療が有効ですが、照射後の炎症や、炎症による色素沈着を防ぐため、トラネキサム酸が処方されることがあります。
一方、肝斑の治療にはレーザーは向かないため、メラニンの生成をおさえる薬での治療が主になります。
ただし、トラネキサム酸はそれだけで絶対的な効果を発揮するほど強い薬ではありません。
また、どんなに薬を使っても、普段のスキンケアをせず摩擦や紫外線の刺激を与えていては、改善は難しいです。
「他のケアもしっかりと行い、専門家と相談しながら治療を進めるようにしましょう」
飲み続けて大丈夫? トラネキサム酸の気になる副作用について
気になる副作用については次の通りです。
- 健康な方であれば心配はあまりない
- 血栓ができやすい人や血をサラサラにする薬を飲んでいる人は注意が必要
- トラネキサム酸で白髪が増えることはない
トラネキサム酸で起こりうる副作用
特に、血をかたまりやすくする「トロンビン」は、トラネキサム酸との併用禁忌の薬ですので、服用している方は必ず医師や薬剤師に申告しましょう。
血栓の既往歴がある方、静脈瘤になっている方、また心筋梗塞や脳梗塞になったことがある方などは注意が必要です。
また、コレステロール値が高い方や、ピルを飲んでいる方も血栓のリスクが高まる可能性がありますので、必ず専門家の指示を仰いでください。
トラネキサム酸で白髪になる?
白髪は、髪の毛を作っている毛包という組織の中でメラノサイトが全くはたらかなくなってしまうことによって発生するものですが、トラネキサム酸はメラノサイトを殺す薬ではないからです。
髪の毛への影響は、心配する必要はありません。
医薬品トランサミンについて
トランサミンには250mgと500mgの2種類がありますが、容量が多い方が肝斑に対して効果を発揮するかといわれると、必ずしもそうではありません。
2021年現在、効果的な容量についてはっきりと証明する論文は出ておらず、人によって適切な量が違うのではとも考えられています。
トランサミンは、服用後の血中濃度が半分以下になる「半減期」が約1.5時間となっているため、血中濃度を保つためには、1日に2~3回飲むことが必要になります。
そのため、容量の多いものを回数少なく飲むのではなく、1日に数回に分けて、長く続けることが効果的と言えるでしょう。
250mgか500mgかは選べる?
トランサミンの使用量は、1日に750mg~2000mgとなっていますので、その範囲内で使用するようにしてください。
服用するとき注意が必要な人
また、薬ですので妊娠中・授乳中の方は基本的に服用しないようにしましょう。
ただし、そんなに強い薬ではないので、妊娠に気付かず飲んでいたからと言って、あまり心配する必要はありません。気付いた時点で使用を控えるようにしましょう。
トランサミンを飲み続けるリスクは?
肝斑は年齢やホルモンバランス等が関係しているため、服用をやめると再発することもありますが、その場合は数ヶ月の間隔をあけて、再び使用することは可能です。
1日の摂取量は2000mgと定められていますが、誤って1~2錠多く飲んでしまってもただちに大きなリスクになることはありません。
ただし、量を増やしても大きな効果が期待できるわけではありません。
血栓のリスクもゼロではないので、用法・容量を守り、決められた量を飲み続けるようにしましょう。
トラネキサム酸の市販薬やジェネリックについて
市販薬でも肝斑の治療に使うことはできますが、使用上の注意点を確認し、用法・容量を守って使用するようにしましょう」
トランサミンと市販薬との違い
医療用医薬品は、主成分はそれのみであるのに対し、市販薬は複合的にさまざまな成分が入っています。
市販薬を選ぶときは、主成分以外に何が入っているのかを確認するようにしましょう。
市販薬の場合、自己流の内服方法で何かあったときには自己責任となりますので、必ず決められた用法・容量を守って使用するようにしてください。
トラネキサム酸は、肝斑治療の他、レーザー治療後やニキビ後の炎症後色素沈着予防として、短期的に使用することも可能です。
その場合も医師や薬剤師に相談の上、決められた範囲内で使うようにしましょう。
ジェネリック医薬品について
「服用の前に、スマホでシミ審断もいいでしょう」
長期的に飲むからこそ副作用も気になるところです。まずは自分のシミに効果があるのか、シミの種類を知って適切な対策をとるようにしましょう。」
顔のシミを本気で治したいなら、3分でできるシミ審断を活用してみてください。
はなふさ皮膚科 理事長 花房火月先生
2006年東京大学医学部医学科卒業後、がん研有明病院や東京大学医学部附属病院などでの研修を経て、東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線レーザー科・助教。2011年、三鷹はなふさ皮膚科を開設の後、東京・埼玉で8院を開院。難治性の皮膚疾患をはじめ、薄毛、シミ・シワなどの美容皮膚科にも取り組む。著書に『やっぱり美人は、かかりつけの美容皮膚科を持っていた』など。