肝斑(かんぱん)はマスクでも悪化する!美容ドクターが治療法やセルフケアを紹介

シミの一種で多くの女性を悩ませる肝斑(かんぱん)。近年のコロナ禍で着用する機会が増えた「マスク」も、肝斑を悪化させる要因のひとつであることをご存知ですか?

今回は肝斑について、特徴や原因、悪化の要因のほか、クリニックでの治療法やセルフケアのやり方について美容ドクターが解説します。気になる疑問への回答やアドバイスもあるので、肝斑で悩む方はぜひご覧ください。

お話を伺った医師

五本木クリニック

美容診療部長 松下 洋二 先生

1989年 国立鳥取大学医学部卒業後、京都大学医学部形成外科入局。1995年 有名美容外科分院長を歴任。

大学附属病院、他関連病院にて形成外科、美容外科を研鑽。2007年  五本木クリニック美容診療部長就任。

日本美容外科学会正会員、日本形成外科学会正会員、日本美容医療協会正会員

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女性に多いシミ「肝斑」とは

ー肝斑はどのように診断するのですか?

肝斑にはさまざまな特徴があります。例えば、症状が比較的変動しやすいのも特徴のひとつと言えるでしょう。そのほか、具体的には以下のような特徴から総合的に判断して、診断していくことになります。

肝斑の特徴

ー肝斑にはどのような特徴がありますか?

通常は左右対称で発生することが大きな特徴です。出る部位としては頬が多いですね。

女性の発症率が圧倒的に高く、男性と比較して10倍ほどになります。

10代でも肝斑が出ることはありますが、30代から50代ぐらいまでの方に特に多いです。

そして、症状が比較的変動しやすいことも特徴で、紫外線の強い夏場に濃くなったり、妊娠などの女性ホルモンの変動によっても変化したりすることがあります。

他のシミとの違い

ー肝斑は他のシミとは違うのですか?

違います。症状だけでなく、適した治療法もそれぞれで違うんですね。

なお、肝斑以外のシミは5種類あります。

老人性色素斑は、一般的に「シミ」と認知されているもので、茶色くて丸いポツポツが出てくるタイプです。この老人性色素斑を長期間放置すると、脂漏性角化症といってイボのように盛り上がってくることがあります。

そばかすは、細かな斑点が広がるタイプのシミをいいます。ちなみに、そばかすは遺伝が関係するといわれていますが、肝斑ではそのようなことはありません。

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、色素が肌の深くにあり、どちらかというとアザに近いタイプです。

炎症後色素沈着は、皮膚炎やニキビ、ケガなどが起きた部位に、色素沈着が残るタイプのシミになります。

肝斑の原因

ー肝斑が発生する原因は何ですか?

明確な原因は不明ですが、「女性ホルモンが関係しているのではないか」と言われています。

その理由としては、女性ホルモンの変化と肝斑の症状の変動に関連が見られるからです。例えば、妊娠やピルの服用、ホルモン補充療法、LGBTの男性が女性ホルモンを打つ場合などに、肝斑が発生することがあります。

また、閉経後に発症することがほぼないため、これも女性ホルモンとの関連を伺わせているのです。

肝斑を悪化させる要因

ー肝斑を悪化させると考えられる要因には、どのようなものがありますか?

女性ホルモン、紫外線、摩擦。これが肝斑の三大要因と言えるかと思います。

特に摩擦については、洗顔時や、拭き取りタイプのスキンケア製品、固めてはがすタイプのパック、顔でコロコロ転がすタイプのマッサージ器具を使用するときなど、日常で発生する機会が多いと言えます。

また、カミソリを使った顔ぞりも摩擦となるため、 少なくとも肝斑が発生している部位は避けた方が無難です。

三大要因以外では、喫煙、過度の飲酒、ストレス、活性酸素などが挙げられます。

マスク肝斑

近年は、コロナ禍ならではの肝斑とも言える「マスク肝斑」が増えています。

頬のトップ部分はマスクと擦れやすく、しかも長時間の着用が必要な機会も多いため、これが肝斑悪化の要因のひとつになっていると考えられるのです。

当クリニックでも、マスク肝斑でお悩みの方からの相談をよく受けますね。

肝斑のクリニック治療

ークリニックでは肝斑に対して、どのような治療を検討するのですか?

体や肌に負担の少ない治療から検討することが基本となります。例えば、レーザートーニングは肌へ多少負担がかかるため、最後に選択することが多いです。

ここからは、通常案内する順番で、肝斑の治療法をご紹介します。

シミは種類によって適切な対策方法が異なりますが、大きく分けて『シミ取りレーザー』と『セルフケア』の2つの方法があります。シミ・コンシェルジュが行ったシミ対策に関するアンケート調査では、以下のような結果となっています。

調査概要:シミ対策に関するアンケート調査
調査期間:2022年9月1日~2023年2月28日
調査人数:5,673名
調査方法:インターネット調査(株式会社メディプラス製薬)
シミを対策したい人の多くが、美白系化粧品などを使用してセルフケアでの改善を目指していることがわかります。つまりそれは、病院やクリニックで診てもらうことなく、シミの状態を自分で判断している人が多いということでもあります。

しかし、上記で紹介したように実はシミにはたくさんの種類があるため、正しいケアができていない可能性がございます。そのため、まずは『シミ審断』でご自身のシミを種類を特定し、種類に応じて効果が見込めるケア選びから始めましょう。

①飲み薬/サプリメント

飲み薬は、ファーストチョイスとして選ばれることが多い治療法です。

肝斑治療ではトラネキサム酸や、ハイチオール(Lシステイン)を飲んでいただきます。また、肝斑に限らず、シミに悩む方にはビタミンCやビタミンEを併用することもあります。

飲み薬だけで肝斑が消える方もいらっしゃいますが、その場合はそこで治療終了となります。

②美白の塗り薬

飲み薬だけでなく肌に塗布する外用薬もあります。

当クリニックでは配合濃度5%のハイドロキノンを処方しています。ハイドロキノンは強力な美白作用を持つ成分です。

③イオン導入

イオン導入は、電気の力で肌へ美白成分を届ける機器です。

肌は異物が入りにくいバリア機能という構造を持っていますが、イオン導入では美白成分を強制的に浸透させることが可能です。

肝斑治療では、ビタミンCやトラネキサム酸などの成分を浸透させます。

④ケミカルピーリング

飲み薬で3ヶ月ほど様子を見ても効果がない、そして塗り薬(外用薬)を使用しても変わらない場合はケミカルピーリングを検討します。

ケミカルピーリングは薬剤を使って古い角質を除去することで、表皮のシミ(メラニン色素)の排出を助ける治療法です。

肝斑が悪化しないように慎重に実施する必要がありますし、やりすぎは逆効果です。

⑤レーザートーニング

レーザートーニングは、通常よりも出力の弱いレーザー治療機器です。

レーザートーニングでは、シミの原因となるメラニン色素を生成するメラノサイトを刺激せず優しくメラニン色素を分解することが可能です。これを定期的に複数回繰り返します。

当クリニックでは、従来の機器よりも効果と安全性を高めた新機種・ハリウッドスペクトラをご用意しています。

ただし、優しくメラニン色素が分解できるとはいえ、やりすぎると色が抜けすぎて白斑(はくはん)や色むらのようになることがあるので、注意が必要です。

なお施術後は、入浴、メイク、飲酒も当日より可能です。

肝斑のセルフケア

肝斑はある程度、ご自分で予防・ケアすることが期待できます。今回は市販薬やスキンケア化粧品の選び方、具体的な予防方法をご紹介しますので、ぜひお試しください。

市販薬選びのポイント

ーどのような成分が配合された市販薬を選ぶと効果的でしょうか?

肝斑向きの市販薬としてはトランシーノという製品があります。

トランシーノは、トラネキサム酸・Lシステイン、ビタミンCなどがミックスされた医薬品で、いくつかラインナップがあるようです。

この他、ハイドロキノン、アルブチン、アゼライン酸、レチノイン酸、油溶性甘草エキスとか、ビタミンC誘導体、レチノール、リノール酸などの成分も良いでしょう。

これらは厚生労働省が認可した「美白作用が期待できる成分」で、研究データも出ていますから、このような成分が配合されている市販薬であれば、肝斑への効果も期待できます。

スキンケア化粧品選びのポイント

ー肝斑に悩む方がスキンケア化粧品を選ぶ場合、敏感肌用のものを選んだ方が良いのでしょうか?

敏感肌用のスキンケア化粧品は、肌への不要な刺激が避けられるので良いでしょう。

一方、ニキビ用のスキンケア化粧品の成分は、肝斑ケアとは別物ですので、使わないようにしてください。

予防法①紫外線ケア

ー肝斑を予防する方法はありますか?

一番大事なのは、紫外線ケアです。

肝斑に限らず、シミ全般の予防、あるいは悪化を防ぐために紫外線ケアは欠かせません。

そのためには日焼け止めの利用も効果的ですが、状況に応じて使い分けることがベターです。

例えば、旅行などに行って長時間紫外線に当たる予定があるならばSPF40〜50を選びましょう。ご近所でちょっと買い物する程度であればSPF20くらいで充分と言えます。

SPFの高い日焼け止めは肌の負担になりますから、「常に強力な製品を使えば良い」というわけではないんですね。

予防法②こすらない

ー他に肝斑の予防方法はありますか?

紫外線ケアの次に大切なのが、こすらないことです。

すでにご紹介したように、洗顔、クレンジング、拭き取りタイプのスキンケア製品、固めてはがすタイプのパック、顔でコロコロ転がすタイプのマッサージ器具、カミソリを使った顔ぞりなどで発生する摩擦は、肝斑に良くありません。

それでも洗顔はしないわけにはいきませんので、優しく洗うことを心がけるようにします。

具体的には、ムースのような細かい泡をたくさん立てて、泡で包み込むように洗います。手で直接触れず、そーっと洗ってください。

もちろん、スクラブ入りの洗顔フォームなどは、使わないようにしましょう。

【美容ドクターが解説】肝斑に関するよくある疑問

最後に、肝斑にお悩みの方から相談されることの多いご質問にお答えします。

肝斑を完全に消すことは可能?

ー治療で肝斑を完全に消すことは、可能なのでしょうか?

これには個人差があります。

中には治療で肝斑が完全に消える方もいる一方、消えたと思ってもまた出てくる方が結構いるんです。

肝斑は、一度消えても再発することがよくあり、そこが厄介なんですね。

なお、女性の場合は閉経によって、肝斑が自然に薄くなったり、消えることもあります。

通常のレーザーでも治療できますか?

ー肝斑は通常のレーザーでも治療できますか?

できません。

そばかすや老人性色素斑であれば通常のレーザーで治療できますが、肝斑にレーザーを使うと一度はかさぶたになって取れるものの、その後再発して、余計に濃くなるケースも多いのです。

肝斑にとって、通常の治療で使われるような強めのレーザーは禁忌です。

肝斑と他のシミは合併する?

ー肝斑と他のシミが合併することはあるのですか?

あります。

先ほど「シミには肝斑を入れて6種類ある」とご紹介しましたが、その全てが合併しているようなケースもあります。

このような場合も治療は可能ですが、それぞれのシミで適した治療法が違うので、治療の順番を考えなければなりません。

強めのレーザー治療を優先すると肝斑に良くありませんし、肝斑が特に気になるという方の場合はやはり、肝斑に有効な治療を優先します。

市販薬とクリニックでの処方薬に違いはある?

ー市販薬と、クリニックで処方される薬には違いがありますか?

同じ成分でも配合濃度が異なります。

米国では化粧品に配合できるハイドロキノン濃度は2%までと決められていますが、日本ではその濃度規制はなく、中には10%という高濃度のハイドロキノンを含む化粧品も売られています。

ハイドロキノンは、濃度が高くなるほど漂白効果は高くなりますが、炎症や白斑といった副作用の発生頻度も高くなるので自己判断で高濃度のものを使用するのは危険です。

漂白効果と副作用のバランスを考えたとき、副作用が起こらない範囲で最大効果を出せる濃度は約5%であり、当クリニックでも5%のハイドロキノンクリームを採用しています。

セルフケアで肝斑が悪化することはある?

ーきちんとセルフケアを行ったのに、肝斑が悪化してしまう理由は何でしょう?

これは、3つほど理由が考えられます。

1つ目は、市販薬やスキンケア製品の選び方を間違えたことです。

中には成分表記などが曖昧な薬や製品もありますが、それらを使って、かえって肝斑が悪化するトラブルはよく耳にしますよ。

2つ目は、セルフケア方法を間違えていることです。

紫外線ケアが不十分だったり、間違った洗顔などで顔をこすっていたりなど、無意識に間違ったセルフケアを実践しているケースは少なくありません。

3つ目は、シミがそもそも肝斑ではなかったケースです。

シミには肝斑を入れて6種類があり、素人の方が自分でそれを見分けるのは相当難しいです。特に、シミが合併している場合は、専門家でも見分けるのに苦労します。

シミは種類ごとによって別々の治療法が必要ですから、最初の見立てを間違えば改善・治癒することもありません。

クリニックでの治療期間はどのくらい?

ークリニックで肝斑を治療する場合、どのくらいの治療期間が必要ですか?

治療期間には個人差があります。

早い方だと飲み薬で、3ヶ月程度で肝斑が消える方もいます。

一方、しぶとい肝斑のケースでは、治療を1年くらい継続しても治らない方がいらっしゃいますね。

肝斑が悪化しやすい人/治りにくい人の特徴は?

ー肝斑が悪化しやすい人/治りにくい人はいますか?

います。

女性ホルモンや紫外線、間違ったセルフケアなど、何らかの要因があり続けている方は肝斑が悪化しやすい、あるいは治りにくいタイプと考えられます。

また生活習慣や職業で、肝斑が悪化しやすい/治りにくい方もいるんですね。例えば、営業職で外回りの多い方や保母さんなどは、外に出る機会が多いことから、紫外線を防ぎきれないというケースもあります。

肝斑が悪化しやすい/治りにくい要因を持っている方は、それを考慮しつつ治療しなければなりません。

【肝斑に悩む方へ】美容ドクターからのアドバイス

肝斑に悩む方は、まずはプロに見てもらうことがベストな方法になります。

「他のシミが併発していないか」「そもそも本当に肝斑なのか」を正しく診断し、適切な治療を選択しないと改善が見込めないからです。

近年は、肝斑へのアプローチが期待できる市販薬も手軽に購入できますが、セルフケアでは診断の段階で間違う危険性があります。自己判断で余計にシミが悪化した…というケースの方々も、実際に多くクリニックに来られています。

そして市販薬でも、医薬品である以上、副作用の危険があります。

例えば、美白成分のトラネキサム酸はもともと止血剤で、血を固めやすくする作用があります。コレステロールの高い方が飲み過ぎると、血管が詰まって脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクもあるので、自己判断で薬局で購入して飲み続けることは非常に危ないです。

その点、クリニックではコレステロール値などの検査をしたうえで薬を処方するので、安心です。

セルフケアでは、紫外線対策と、こすらないスキンケアを中心に実践しましょう。そして肝斑を自分で治そうとはせず、早めに医療機関へご相談ください。

お話を伺った医師

五本木クリニック

美容診療部長 松下 洋二 先生

1989年 国立鳥取大学医学部卒業後、京都大学医学部形成外科入局。1995年 有名美容外科分院長を歴任。

大学附属病院、他関連病院にて形成外科、美容外科を研鑽。2007年  五本木クリニック美容診療部長就任。

日本美容外科学会正会員、日本形成外科学会正会員、日本美容医療協会正会員

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・Dr .松下ブログ