顔にできる6種類のシミ|美容ドクターに聞く治療法とセルフケア

美容を損なう要因として、多くの方を悩ませるのが顔のシミです。顔にできるシミにはさまざまな種類があり、実はそれぞれで治療法が異なるということをご存知でしょうか? 今回は、顔にできるシミの種類・特徴と、それぞれの治療法を美容ドクターが解説します。よくある疑問への回答やアドバイスもあるので、ぜひチェックしてください。

お話を伺った医師

表参道メディカルクリニック銀座院

院長 美容皮膚科医 武田さやか先生

東北ろうさい病院勤務後、某美容クリニックで美容皮膚科・エイジングケアをメインに従事。2021年10月、表参道メディカルクリニック銀座院院長就任。

・表参道メディカルクリニック

・切らない、小顔、若返り!さやか先生の美容教室(YouTubeチャンネル)

顔にできるシミは主に6種類

ー顔にできるシミにはどのような種類があるのですか?

大きく分けて、6種類あります。

具体的には、老人性色素斑、そばかす(雀卵斑)、炎症後色素沈着、肝斑、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)、脂漏性角化症の6つです。

それぞれに特徴が異なりますので、詳しく解説していきますね。

顔にできるシミ①老人性色素斑

老人性色素班とは、多くの方が一般的にイメージされる「シミ」のことです。茶褐色の円形のシミで、顔だけでなく、手や足に発生するケースもあります。

名前の通り、年齢を重ねると出てきやすいシミのひとつと言えるでしょう。ただし、屋外での活動が多く紫外線をよく浴びる方などの場合は、若いうちから気になってしまうこともあります。

顔にできるシミ②そばかす(雀卵斑)

そばかすは雀卵斑(じゃくらんはん)とも呼ばれ、幼い頃から発生するケースのあるシミです。両ほほや鼻の付け根、目の下などに黄褐色のシミが斑点のようにパラパラとでき、時には手や背中に出てくることもあります。季節によって濃さが変わることも特徴的ですね。

原因としては、遺伝が関係すると言われています。 そのため、発生そのものを防ぐことは難しいですが、早期から紫外線対策を行うことで、増えたり濃くなったりといった事態を予防する効果などは期待できます。

顔にできるシミ③炎症後色素沈着

炎症後色素沈着とは、虫刺されやニキビの跡などによる炎症後に肌のターンオーバーが乱れ、メラニン色素が上手く排出されないことが原因で色素が沈着してできるシミです。色ムラがあり、輪郭がぼやけていることが多いです。

虫刺されなどは世代を問わず起こりえるので、炎症後色素沈着は誰もが発生する可能性があります。クレンジングや洗顔など、スキンケアをする際の摩擦によってできるケースも考えられます。

顔にできるシミ④肝斑(かんぱん)

肝斑は、両ほほを中心として左右対称に出現するシミで、色素沈着の一種です。おでこやこめかみ、口周辺にできることもありますが、まぶたには発生しません。

原因としては、女性ホルモンなどが関係すると言われています。そのため、30代前後の方に多く見られ、閉経後などから発症するケースはほぼないです。 やはり女性の発症が多いですが、男性で発症される方もいます。

顔にできるシミ⑤ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス) は、通常のシミに比べて、肌のより深いところに色みが入っているタイプのシミです。茶色から青っぽい色合いで、深い部分にあるほど色味が濃くなります。

ADMのはっきりとした原因は解明されていませんが、遺伝が関係するとの説もあり、早ければ思春期頃に発生するケースがあります。

顔にできるシミ⑥脂漏性角化症

脂漏性角化症は、老人性色素班と同じく年齢を重ねることで出てきたり数が増えたりするシミです。茶あるいは黒っぽい色味で、触り心地はザラザラしています。

膨らみを伴ってイボのように見えるものもありますが、老人色素斑に厚みが出て盛り上がり、脂漏性角化症に発展するケースも実際にあるのです。顔だけでなく、身体のさまざまな箇所にできる可能性があります。

【シミの種類別】クリニックでの治療法

ー顔のシミに対して、クリニックではどのような治療法がありますか?

たくさんの治療法があります。当クリニックでも、シミ治療のさまざまな機器を取り揃えています。 それらの機器の中から、シミの種類や患者さんの体質などに応じて最適なものをチョイスし、一人ひとりにオーダーメイドで治療計画を立てていますね。

実際にシミに悩む方は多く、当クリニックで実施する肌治療の半数は、シミ治療です。シミ治療では、シミのタイプを見極め、さまざまなことを考えて治療方針を立てなければならないため、多くの治療の中でも一番大変かもしれません。

なお現在は、美容医療の進歩によって各シミのほぼ全てに対して、有効な治療法があります。

老人性色素斑の治療法

老人性色素斑は症状によって、治療法が何パターンかあります。

シミが本当に薄い状態であれば、通常よりも出力の弱いレーザーを照射する「レーザートーニング」を検討します。

一方、色味が非常に濃い、大きいものが一個あるといった場合は、「シミ取りレーザー」を使ったスポット治療を検討します。ただし、顔に薄いシミがたくさんある場合は、それらが目立ってくるリスクもあるので、最初からこの方法を選ぶことは少ないですね。

リスクの少ない治療を考えると「IPL(フォトフェイシャル)」による全体治療が適しているかと思います。

そばかす(雀卵斑)の治療法

そばかすに対しては、「光治療」を最初に選ぶことがほとんどですね。光治療とは、レーザーよりも波長が短く、広範囲にアプローチできる光を照射する治療で、そばかすには非常に反応しやすいのです。

光治療をある程度実施しても反応が弱い場合には、機器の変更やスポット治療への切り替えを検討します。

最初は1~2ヶ月おきに実施し、肌がキレイになった後も、3~4ヶ月から半年に1回程度は通院したほうが良いかと思います。これは、内服薬などで、治療後の肌の状態をコントロールするためです。

炎症後色素沈着の治療法

炎症後色素沈着に対しては、最初の3~6ヶ月はクリニック治療ではメソナJという導入治療のみを行っております。その後、肌の状態によって他のシミや肝斑と同じような治療に移行します。ルメッカ、トーニング、ポテンツァ肝斑モードなどです。

場合によっては、ピーリングを用いて治療することもあります。

肝斑の治療法

肝斑は、当院の場合ですと「ポテンツァ(POTENZA)」が最初に選ばれることが多いですね。ポテンツァは、極細の針の先端から高周波を出力する機器で、肝斑ほか、シワ、ニキビ、毛穴、薬剤投与(ドラッグデリバリー)など、様々な治療に対応できる点が特徴となります。

また、電気の力によって皮膚深部にまで美容成分を浸透させる国産の美容機器「メソナJ(エレクトロポレーション)」も併用することが多いです。原理はイオン導入と似ていますが、その数十倍も美容成分を浸透することができると言われています。

その他の治療法では「レーザートーニング」や、薬剤を使用して古い角質を除去する「ピーリング」などが挙げられます。

特に女性の場合、肝斑のある・なしで治療計画が、大きく変わってきます。肝斑は、通常のレーザーを当てると、再発してかえって濃くなる恐れがあるため、他のシミも併発している場合は、肝斑治療の優先を検討します。

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)の治療法

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス) は、「ルビーレーザー」がもっとも確実な治療方法になるかと思います。ルビーレーザーは、アザにも対応する高パワーなレーザーで、周辺組織にダメージを与えず、皮膚内部のメラニン色素を狙い撃ちすることが可能です。

通常のレーザーですと、ADMにはあまり効果のないこともありますね。なお、ルビーレーザーを持っているクリニックは比較的限られています。

脂漏性角化症の治療法

脂漏性角化症は、シミが盛り上がっている場合、それを削る治療法を実施します。例えば、水分に反応するレーザーを照射する「炭酸ガスレーザー」による治療は、メスで切除するよりも治りが早く、傷跡も残りにくいです。 出血や痛みも少ないですね。

ちなみに通常のレーザーでは、シミの厚みに熱エネルギーが吸収され、効果が期待できないケースも多いです。それから「液体窒素を利用した治療法(冷凍凝固療法)」もあり、こちらは保険適用となります。

シミ治療で使用される薬やサプリメント

シミ治療では薬やサプリメントも併用します。

内服薬は、トラネキサム酸とシナールとユベラが、基本的にはセットになります。それからタチオンという薬もあるのですが、これは現在、全国的に品薄になっているかと思います。

外用薬は、当院で一番お出ししているのはトラネキサム酸のクリームです。後はハイドロキノンやトレチノインも処方されることがあります。

サプリメントは、Lypo-C(リポソーム型ビタミンCサプリメント)、さらに飲む日焼け止めとも言われるユーブロック(U・Vlock)がありますね。

顔のシミのセルフケア

顔のシミに対しては、普段から正しいケアをおこなうことが重要です。普段のケアが間違っていると、いくら治療をしても、うまく効果が出ないケースもあります。今回はセルフケアの基本的な方法と、化粧品についてのアドバイスもご紹介しますので、気になる方はぜひ参考にしてください。

セルフケアの方法

ー顔のシミを改善・予防するためのセルフケアには、どのような方法がありますか?

前提としてクリニック治療のような効果を、セルフケアで得ることは、ほぼできません。例えばごく軽い症状なら、市販の基礎化粧品や医薬品で対応できるケースもありますが、根本的な治療にはなりません。

セルフケアに対しては、現状を悪化させないなどシミ予防を主な目的としておこないましょう。具体的には、紫外線対策としての日焼け止めの使用や、保湿をしっかりしていただくことが大切です。

また、摩擦しないことが重要なので、洗顔やメイク、クレンジングの際には特にご注意ください。

それから、摩擦になるという意味で、美顔器などもあまり使わない方が良いでしょう。というのも、一生懸命に美顔器を使ったり、マッサージを頑張ったりした結果、それが摩擦刺激になって劇的にシミが悪化する方も多いのです。 「自分の顔に触ること」自体を、あまりおすすめしません。

化粧品の選び方

ー化粧品は、肌に優しいオーガニックや無添加の製品を選ぶと良いですか?

化粧品は製品の選び方よりも、化粧品の扱い方/使い方のほうが重要です。

化粧品の扱い方については、古い化粧品は使わないようにしてください。古い化粧品は成分が劣化したり、油分などの品質が悪くなったりしている可能性があり、それがシミやくすみの原因となる恐れがあります。

化粧品の使い方については、できる限り、肌に摩擦を与えないように使用してください。例えば、洗顔料などはネットでしっかりと泡立ててから、使うと良いでしょう。はじめから泡タイプになっている製品も売っているので、それを使用すれば間違いありません。

どのような化粧品を選ぶべきなのかは、個人で異なります。

基本的に、摩擦になりやすい拭き取りタイプなどは避けた方が良い一方、オイルクレンジングなどは肌質によって向き不向きがありますね。オイルを使うと毛穴が詰まるような方は、避けた方が良いでしょう。

ちなみに当院では、どのようなスキンケア製品を使用しているか、どのような使い方をしているかなども受診者に聞いています。その上で、使い方の指導などもさせて頂いておりますが、洗顔やメイクで無意識にこすっている方はかなり多いと思いますね。

【美容ドクターが解説】顔のシミのよくある疑問

最後に、顔のシミでお悩みの方から相談されることの多いご質問にお答えします。

なぜシミができる?

ーそもそも、なぜシミができるのですか?

メラノサイトと呼ばれる細胞が刺激されるためです。メラノサイトは、紫外線・摩擦・女性ホルモンなどの刺激を受けると「メラニン」と呼ばれる色素の合成や増殖を促します。

メラニンは紫外線から体を守る、大切な役割を担っています。しかし、メラニンが過剰生成されたり、代謝が滞って皮膚にメラニンが蓄積されたりすることなどによって、シミの原因となるのです。

注意すべき摩擦とは?

ーセルフケアで注意すべき摩擦ですが、摩擦の具体例はどのようなものですか?

最近多いのはマスクですね。長時間のマスク着用で顔に摩擦が生じるのですが、これはコロナ禍の影響です。

それから、夏場などに汗を拭く際にも注意が必要です。近年は猛暑日が増えていますが、男女問わず汗をゴシゴシ拭いて、摩擦になってしまう恐れがあります。汗を拭く際は、優しく押さえるような感じで拭き取ると良いですね。

さらに、化粧品については先ほど触れましたが、コットンもあまり使わない方が良いと思います。メイクを落とす際にどうしても摩擦が生じますし、拭き取り化粧水も肌やシミの状態によっては控えましょう。

スクラブ洗顔料も避けた方が良い?

ースクラブ入りの洗顔料も摩擦になるので、避けたほうが良いですか?

お肌の状態に問題のない、若い方などであれば使っても大丈夫です。ただし、すでにシミが発生しているなど、お肌のトラブルや悩みを抱えている方は控えた方が良いでしょう。

なお肌に問題がない方でもスクラブ洗顔をしすぎると、過剰な刺激からシミの原因となる恐れがあります。

メラノサイトに直接アプローチする治療法はありますか?

ーメラニン色素を生み出すメラノサイトに、直接アプローチできる治療法はありますか?

はい、あります。近年では、ポテンツァという機器の「肝斑モード」が、一番直接的なアプローチになっていると思います。

例えばシミ治療の早い段階でポテンツァを使用することで、後の治療の効果が出やすく、色素沈着のリスクを抑えるといった効果が期待できるケースがあります。

シミ治療をする上で肌のベースを作っておく意味でも、ポテンツァは優れた機器と言えるでしょう。

生まれつき肌色とシミの関係とは?

ー生まれつき地黒、あるいは色白といった肌の色の個人差は、シミのできやすさと関係しますか?

関係する部分はあるかと思います。紫外線を浴びた際、色白の方は地黒の方と比較して、メラニンが過剰生成されるリスクが高いです。その結果、シミが発生するリスクも高くなる可能性が考えられます。

また色白の方は、地黒の方と比較してシミが目立ちやすいという違いもありますね。

シミの治療計画の立て方は?

ーシミの治療計画は、どのように立てるのですか?

さまざまな点に配慮しますが、特に、以下3点に注意して計画を立てます。

1つめは、シミのタイプや状態、併発の有無を確実に見極めることです。

なお当クリニックでは肌状態の見極めのために、シミ・隠れジミをはじめ、毛穴・シワ・肌のキメを3Dで高精度に解析できるCanfield Scientific社製の「皮膚画像解析装置」を導入しています。

2つめは、刺激を最小限にすることです。

実は治療そのものも少なからず肌の刺激になりますから、レーザーのような積極的な治療を色々と重ねるだけではダメなのです。そこで、「守りの治療(鎮静の治療)」を治療計画にしっかり入れることが大切になります。

3つめは、患者様のライフスタイルを考慮することです。

特に、紫外線をよく浴びる職業や趣味をお持ちの方の場合、通常の治療内容からかなり変えないといけないケースもあります。

これらを考慮せず治療をすると、紫外線の吸収が良くなったり、シミが余計にひどくなったりする恐れもあるからです。ライフスタイルに懸念点のある患者様に対しては、特にきちんとリスクを説明した上で、治療をスタートしています。

クリニックでのシミ治療の期間は?

ークリニックでシミ治療する場合、どれぐらいの治療期間が必要ですか?

最低、3〜4ヶ月から半年くらいは見ておく必要があります。

ただし、その方の体質やライフスタイルなどで、治療の方法や効果も変わるので、治療期間には個人差があるとお考えください。

自然食品やネット広告の薬に効果はある?

ーインターネットを見ると「アロエがシミに効く」といった情報や、「シミが剥がれるクリーム」といった広告を目にしますが、本当ですか?

シミの治療効果という意味では、基本的に「信憑性はない」と考えておいた方が良いでしょう。

食品に関しては、シミ予防にプラスになる可能性のあるものもありますが、「シミを消す」など積極的な治療効果は期待できないかと思います。

また、シミに対するアプローチが期待できる医薬品・医薬部外品は確かに存在します。しかし、シミが「剥がれる」ような即効性のある薬はありませんし、品質やメカニズムが不明な以上、使用すると肌の状態が悪化する恐れもあります。

日本国内だけでも多くの皮膚科/美容皮膚科が存在しますが、それは「セルフケアでシミは治せない」ことの証明かもしれませんね。

シミ予防の目的で通院しても大丈夫?

ーシミの治療ではなく、予防のためにクリニックに通院しても大丈夫ですか?

はい、大丈夫です。セルフケアに悩む方や、お化粧や洗顔のやり方を見直したい方など、クリニックへお気軽にご相談いただければと思います。

間違った自己判断でセルフケアを続けてしまうと、シミをはじめ、さまざまな肌トラブルにつながる恐れがあるため、専門家(医師)に聞くのが一番ですね。

【顔のシミに悩む方へ】美容ドクターからのアドバイス

-最後に、顔のシミに悩む方へ、アドバイスをお願い致します。

セルフケアについてですが、お家ではなるべく必要以上に、いろいろなことをしない方が良いと思います。スキンケアに熱心な方ほどやり過ぎてしまい、シミをはじめとする肌トラブルが多くみられることもあります。

私自身は、先程ご紹介したように紫外線対策やこすらないように意識して、あとは多少の内服薬やトラネキサム酸のクリームを使うくらいです。積極的な治療については、クリニックでしかやらないようにしています。

しかし、シミにはさまざまな種類があり、最適な治療法も異なるので、まずは正確な見立てが必要です。シミに悩む方はなるべく自己判断せず、クリニックへ相談することがベストかと思います。

お話を伺った医師

表参道メディカルクリニック銀座院

院長 美容皮膚科医 武田さやか先生

東北ろうさい病院勤務後、某美容クリニックで美容皮膚科・エイジングケアをメインに従事。2021年10月、表参道メディカルクリニック銀座院院長就任。

・表参道メディカルクリニック

・切らない、小顔、若返り!さやか先生の美容教室(YouTubeチャンネル)