持続性オゾンジェルによる殺菌効果の検討

日本防菌防黴学会 第29回年次大会にて発表

発表者:

株式会社メディプラス製薬(旧:株式会社VMC) 塩田剛太郎
丸山良亮、鈴木喜久美
昭和大学歯学部有床義歯学講座  芝燁彦
東京医科歯科大学大学院  芝紀代子
岡村登、千田俊雄
千葉大医学部付属病院検査部 木村明佐子

開発背景:

オゾン殺菌はオゾンガスやオゾン水という形で、細菌、酵母、カビ、ウイルスなど広いスペクトルで殺菌でき、残留性がなく耐性菌を作らないなど、従来の消毒薬よりも有用性の高い殺菌法であることは既に知られています。しかし、オゾンは半減期が短く、オゾン水でも数十分程度であり、原則として利用場所でオゾンを製造する必要性があるため、適用範囲が限られてしまうことが問題点であります。
そこで、この問題点を克服するべく、長期保存可能かつ適用範囲の拡大を目指し、グリセリンを溶媒とした新規オゾン化合物つまり持続性オゾンジェルを開発しました。

研究内容:

・持続性オゾンジェル(OG)による様々な菌株に対する殺菌効果及び経時的な発育抑制の検討。
・オゾンジェルによる殺菌効果の濃度や保存の影響の検討。

OG殺菌効果試験で用いた供試験菌株:
標準株
大腸菌 Escherichia coli ATCC25922
緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa ATCC27853
黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus ATCC25923
カンジダ・アルビカンスCandida albicans IAM4966

臨床分離株
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 MRSA
表皮ブドウ球菌 Staphylococcus epidemidis
肺炎桿菌 Klebsiella pneumoniae
サルモネラ菌 Salmonella enteritidis
レジオネラ菌 Legionella pneumophila
枯草菌 Batillus subtilis

結果:

保存可能かつ殺菌効果のあるオゾンジェルを開発できた。
精製オゾンジェルの酸化力は極めて強力であり、希釈後も殺菌効果が得られた。
既存のオゾン水と同様に殺菌スペクトルが広く、比較的短時間の殺菌効果が得られた。

今後の展開:

オゾンジェルの保存可能である性質を生かし、これまで制限されていた適用範囲を拡大する。また溶媒に用いているグリセリンの性質(水溶性、保湿作用)も取り入れた活用法を検討する。→ 褥瘡治療剤、口腔内洗浄、手洗い消毒

オゾンジェルの殺菌効果

方法:殺菌効果の判定は、96穴プレートを用いた岡村の半定量的生菌数計測法を用いました。まずおよそ10の8乗の菌液を10倍量のOGと混和し、接触時間をおいてから反応停止液としてチオ硫酸ナトリウムを混和し、その混和液を、あらかじめ各ウェルに分注しておいた液体培地の1列目に入れ混和後、1列目から10μlずつとり、12列まで順に10倍希釈系列を作ります。そして37℃でovernight培養し、菌が何レーン目まで発育したかを観察し、希釈率から菌数を計算し、半定量的に計測します。
この計測法は生菌数の検出限界が「10の2乗以下」と明確な値を計測できませんが、まず取り掛かりとして新規化合物であるOGの殺菌力を概略的に把握することを目指し、本法を用いました。

オゾンジェルによる殺菌効果の保存の影響

左は黄色ブドウ球菌、右は大腸菌の結果。縦軸は生菌数、横軸は接触時間を示します。滅菌水やグリセリンのコントロールでの生菌数と比較して、新しく精製したOG、精製後2ヶ月室温放置したOGのいずれも明らかに殺菌効果が認められ、いずれも検出限界以下でした。

オゾン濃度による殺菌効果への影響

・オゾンジェル原液
精製したOG原液による殺菌効果を検討しました。
表に示した6種の菌株を用いました。枯草菌を除いて、OG接触直後には検出限界以下まで有意な殺菌効果が認められました。
そこでOG原液の酸化力を測定したところ、数百ユニット、オゾン濃度でいう数百ppm相当あり、殺菌剤として用いられているオゾン水濃度よりもはるかに高値であるため、OGをグリセリンで希釈し、既知の濃度で殺菌効果をみることにしました。

・100ppm OGによる殺菌効果
希釈した100ppmのOGによる殺菌効果を6種の菌株で見てみました。
接触時間120分までの経時的殺菌効果を観察し、結果をスライドに示しましたが、枯草菌以外は、いずれの菌も1分以内に検出限界以下までの殺菌効果が認められました。

・10ppm OGによる殺菌効果
希釈した10ppmのOGによる殺菌効果を6種の菌株で見てみました。
接触時間360分までの経時的殺菌効果を観察し、結果をスライドに示しましたが、真菌であるC.albicansが1分で、大腸菌、緑膿菌は30分で、肺炎球菌は120分、で、表皮ブドウ球菌には180分で検出限界となりました。