オゾンジェルがヒト骨肉腫細胞株Saos-2による骨基質産生に与える影響

王宝禮1)*, 田地 陽一2)*, 益野 一哉1), 大草 亘孝3) 今村 泰弘4)
1) 大阪歯科大学歯学教育室、大阪、日本
2) 東京家政大学栄養生理学研究室、東京、日本
3) 大阪歯科大学歯学部法歯学講座、大阪、日本
4) 松本歯科大学歯学部薬理学講座、塩尻、日本
(2018年4月20日受理)

要旨

オゾンは、抗菌性が高く、微生物の耐性を誘導しないため、現在、潜在的な口腔消毒剤として検討されています。本研究では、最適な用量のオゾンジェルが、in vitroでSaos-2細胞の増殖、I型コラーゲンの産生、およびアルカリホスファターゼ(ALP)の分泌を促進することを示しました。Saos-2細胞の増殖は、MTTおよびDNA合成アッセイにより評価されました。I型コラーゲンの産生およびALPの分泌は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)およびALPアッセイを使用して評価されました。細胞は、0.05、0.5、5 ppmのオゾンジェルで24時間処理されました。オゾンジェル(0.5 ppm)は、Saos-2細胞の増殖を有意に誘導しました。この濃度では、オゾンジェルはI型コラーゲンの産生およびALPの分泌を促進しました。結果は、オゾンジェルが骨芽細胞の細胞代謝を制御し、初期の骨関連バイオマーカーの分泌をもたらすことを示唆しています。

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オゾンがヒト歯肉線維芽細胞のコラーゲンタイプ1および炎症性サイトカイン産生に与える影響

牧田佳真1, 今村泰弘2, 益野一哉3, 田村功4, 藤原眞一1, 塩田剛太郎5, 芝燁彦6, 王宝禮7*

1大阪歯科大学歯学部化学教室, 大阪, 日本
2松本歯科大学歯学部薬理学講座, 長野, 日本
3大阪歯科大学歯学部歯科教育室, 大阪, 日本
4大阪歯科大学歯学部口腔解剖学講座, 大阪, 日本
5 VMC株式会社, 東京, 日本(現メディプラス製薬)
6昭和大学歯学部補綴学講座, 東京, 日本
7大阪歯科大学歯学部細菌学講座, 大阪, 日本

要約

オゾンは、強力な抗菌作用を持ち、微生物に薬剤耐性を引き起こさないため、口腔内消毒剤として検討されています。本研究では、酵素免疫測定法を用いて、in vitroでヒト歯肉線維芽細胞(HGF)におけるコラーゲンタイプ1および炎症性サイトカインの産生に対するオゾン曝露の影響を調査しました。0.5 ppmのオゾンを追加すると、HGFによるコラーゲンタイプ1の産生が24時間以内に有意に増加しました。リポポリサッカライド(LPS)で処理されたHGFによる炎症性サイトカインのインターロイキン-6(IL-6)およびIL-8の分泌は、オゾンが存在する場合に減少しました。これらの結果は、臨床でのオゾンの使用が、微生物病原体への曝露後の炎症と組織の消失を促進する一方で、HGFを介した歯周組織の維持と修復のバランスを促進することを示唆しています。

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アトピー性皮膚炎を始めとした各領域でのオゾンジェルの利用と歯科への今後の適用

背景と目的:
我が国において、国民の約2人に1人が何らかのアレルギーに罹患していると推定されており、アトピー性皮膚炎は国民の1割である。しかしながら、アレルギー疾患に関する研究については、徐々に解明が進みつつあるが、完全な予防法や根治的治療法はなく、生活環境確保と抗炎症剤等の薬物療法による長期的な対症療法となっているのが現状である。1)また、我が国の4分の3が歯周病に罹患していると言われており、その数値は減少していない。つまり、皮膚のみならず歯科においても難治性な慢性炎症疾患とも言えるケースが非常に増加している。また、抗生物質の乱用による多剤耐性菌も社会的に重要な課題となっており、口腔内においても長期間抗生物質を使用できないため、その対応に苦慮するケースが多い。アトピー性皮膚炎も歯周病も炎症疾患であるが、慢性化した炎症状態に対して抗炎症剤として汎用されているステロイド製剤を長期間適用することは、酒さ性皮膚炎などステロイド製剤の副作用の問題からも課題となっている。

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