シミとターンオーバーの関係|皮膚科専門医がセルフケア&治療法を解説

ターンオーバーと呼ばれる代謝サイクルで、日々生まれ変わる肌。実は、ターンオーバーの乱れが、シミの原因となることをご存知ですか。今回はシミとターンオーバーの関係、ターンオーバーが乱れる原因、セルフケアの方法、クリニックでできる治療について皮膚科専門医が解説します。気になる疑問への回答やアドバイスもあるので、ターンオーバーの乱れやシミでお悩みの方はぜひご覧ください。

お話を伺った医師

ビアンカクリニック
皮膚科専門医・皮膚科指導医 岩間 美幸 先生

日本医科大学医学部卒業後、国立国際医療研究センター病院、東京大学医学部附属病院 皮膚科、都立駒込病院 皮膚腫瘍科、山王病院 皮膚科を経て、2022年よりビアンカクリニックに在籍。
日本皮膚科学会・皮膚科専門医・日本美容皮膚科学会所属。化粧品成分検定1級。

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ターンオーバーの基礎知識

ーそもそも、ターンオーバーとは何ですか?

ターンオーバーとは一定のサイクルで肌が生まれ変わる仕組みです。

ターンオーバーが何らかの原因で乱れることで、シミにつながることがあります。

なお、ターンオーバーの乱れやシミは原因の改善やセルフケアで、ある程度防ぐことが期待できます。

ターンオーバーとは

ターンオーバーは肌の深部(基底層)で新たな皮膚細胞が作られ、皮膚表面に押し上げられて、角質や垢(あか)として排出されるまでのサイクルです。

正常なターンオーバーは約28日周期となっています。

ターンオーバーとシミの関係

正常なターンオーバーはシミの原因となるメラニン色素や、くすみの原因となる不要な角質を排出する役割もあります。

もしもターンオーバーが乱れて、周期が伸びると、メラニン色素や不要な角質が溜まり、シミ・くすみの原因となる可能性があるのです。

ターンオーバーが乱れる7つの原因

ターンオーバーの乱れには様々な原因が考えられます。

具体的には「生活習慣・紫外線・間違ったスキンケア・乾燥・便秘・加齢・ホルモンバランス」などの原因が考えられますので、1つずつ解説していきます。

①生活習慣

ターンオーバーの乱れにつながる生活習慣としては寝不足やストレスが挙げられます。

寝不足になると成長ホルモンの分泌が乱れますし、ストレスがかかると皮脂の分泌量が不安定になり、結果としてターンオーバーの乱れにつながるのです。

それから喫煙は、血行不良・活性酸素の増加からターンオーバーの乱れにつながる可能性が考えられます。

喫煙はシワやたるみの原因にもなりますし、美容治療の効果を妨げる可能性もあるので、減煙・禁煙が望ましいですね。

②紫外線

紫外線は肌に不要な刺激を与えることでターンオーバーの乱れにつながりますし、メラニン色素の生成を促して直接シミの原因となります。

なお、シミだけであれば、レーザーで取ることもできますが紫外線は真皮のコラーゲンにダメージを与え、たるみの原因になるため注意が必要です。

たるみ治療は、美容皮膚科の施術の中でも高額なケースがあるため紫外線対策は特に気をつけたいポイントと言えるでしょう。

③間違ったスキンケア

物理的な刺激はターンオーバーが乱れる原因となりますが、間違ったスキンケアもその1つです。

例えば、汚れが気になるということで、スクラブ入り洗顔料などでゴシゴシ洗ってしまう男性も多いかと思います。

結果的にお肌へダメージを与え、くすみや毛穴の開きを招いてしまいますので、日頃から摩擦レスなスキンケアを心がけましょう。

④乾燥

乾燥は肌の保湿機能・バリア機能に悪影響を与え、ターンオーバーの乱れにつながります。

冬場はもちろんのこと、夏場も注意が必要です。

夏は冷房で乾燥する心配がありますが、保湿をしすぎるとニキビの原因になることがあります。加えて紫外線も強いので、夏場は特にスキンケアが難しい時期かと思います。

⑤便秘

便秘は、吹き出物やニキビの原因になります。

また、むくみから皮膚の代謝が落ちたり、肌の油分のバランスが崩れたりするなどして間接的にターンオーバーへ悪影響を与えている可能性は考えられるでしょう。

⑥加齢

加齢はターンオーバーが遅れる要因の1つです。

ただし私の経験上、年齢を重ねた方の肌質はそれまでのスキンケアに大きく左右されています。

例えば、若い頃から日焼け止めを塗っていらっしゃった80代の患者様は、とてもキメが細かくハリがあり、シミもとても少なかったです。

逆に20〜30代の患者様でも、日焼けが好きであまりスキンケアを行わない方などでは、肌のごわ付きやシワができていらっしゃる方にもお会いします。

このように、加齢によるお肌への影響は、かなり個人差があるかと思います。

⑦ホルモンバランス

妊娠や更年期など、ホルモンバランスの変化がターンオーバーに影響を与えるケースがあります。

具体的にはホルモンバランスの変化で肌荒れや乾燥が起き、ターンオーバーの乱れにつながることが考えられます。

なお、妊娠中や授乳中の方は一般的には肝斑が悪化したりシミができやすくなったりすることもあるため、紫外線などにはさらなる注意が必要です。

ターンオーバーとシミのセルフケア

正常なターンオーバーとシミのセルフケアとして、確実に効果が期待できるのは紫外線対策です。

具体的には、日焼け止めを毎日しっかりと塗ると良いでしょう。

SPF50などの強力な日焼け止めでも、汗をかくなどして落ちることがあるため、1日は持ちません。そこで、1日の中で何度か塗り直すことが重要です。

例えば、朝、家を出る時に日焼け止めを塗り、ランチやお昼の外出前などに塗り直しをすると良いでしょう。

それから、頭皮も日焼けをすることで薄毛などにも繋がる可能性がありますので、顔だけでなく頭皮にも日焼け止めを塗ることがおすすめです。

この他、適度な保湿ケアをおこない、洗顔やスキンケアの際にこすらないことも大切ですね。

ターンオーバーの乱れが関係する3つのシミ

ーシミには複数の種類がありますが、ターンオーバーの乱れが関係するシミはどれですか?

シミには主に「老人性色素斑・そばかす・肝斑・ADM(後天性真皮メラノサイト―シス)・脂漏性角化症・炎症後色素沈着」の6種類があります。

この中でターンオーバーの乱れが関係するシミは老人性色素班・脂漏性角化症・炎症後色素沈着の3つです。

ここからは、ターンオーバーの乱れが関係するシミの、それぞれの特徴を解説していきます。

ターンオーバーの乱れが関係するシミ①老人性色素斑

数mm〜数cmくらいの大きさの、茶褐色のシミです。

長年の紫外線ダメージに加え、加齢でターンオーバーが滞ることで発生します。

顔だけでなく、背中・手・すね・デコルテなど露出部位にも出現することがあります。

中年期以降に出現するケースが多いですが、サーフィンなどの屋外スポーツをされている方などは、若い頃から出現するケースもありますね。

ターンオーバーの乱れが関係するシミ②脂漏性角化症

老人性色素斑と同様にメラニンの蓄積が原因となるイボ(隆起したもの)です。

加齢や紫外線などによるターンオーバーの滞りで、メラニンの蓄積が進んだ状態と言えるでしょう。

中年期以降に少しずつ出現し、高齢者になると多くの方に見られます。

ターンオーバーの乱れが関係するシミ③炎症後色素沈着

皮膚へのダメージによって、炎症が発生した後に生じるシミ(色素沈着)です。

皮膚へダメージを与える原因としては、ニキビ・傷・虫刺され・薬・光や金属のアレルギーなどが挙げられます。

炎症後色素沈着は自然に治ることも多い一方、ターンオーバーの乱れによってメラニン色素の排出がうまくいかず、長いあいだ色素沈着として残るケースもあります。

ターンオーバーの乱れやシミの治療法

ークリニックでは、ターンオーバーの乱れやシミに対して、どのような治療を実施するのですか?

お肌やシミの状態を診察させていただいてから、適切な治療を実施します。

必要に応じて、内服薬・外用薬・サプリメントも組み合わせます。

シミの状態を見る機器:ダーモスコピー

シミやイボの状態を診る際は、ダーモスコピーという機器を使用します。

ダーモスコピーを使用すると、皮膚表面を拡大して診ることができ、詳細に検査することが可能です。

シミやイボが、悪性か良性かを診断する上で欠かせない機器ですね。

ターンオーバーの乱れに対する治療:マッサージピール(ケミカルピーリング)

マッサージピールは、古い角質を除去してターンオーバーを整える、ケミカルピーリング治療の一種です。

通常のケミカルピーリングと比較して強力なコラーゲン生成促進効果が期待できる点が大きな特徴となります。

皮膚のごわつきがある方、肌荒れやニキビ跡にお悩みの方、美肌・美白を目指す方などに向いた治療です。

当クリニックでは、お肌のターンオーバー周期に合わせて、1ヶ月に1回程度の施術をおすすめしています。

シミ治療で使用する機器①ピコシュア

ピコシュア(PicoSure)は、シミ・シワ・ニキビ跡の治療法ほか、タトゥー除去まで幅広く対応する医療用レーザー機器です。

「トーニング」「フラクショナル」「スポット」の3モードが搭載されていて、シミ治療ではトーニングとスポットをよく利用しますね。

例えば、ピコトーニングでは老人性色素斑・炎症後色素沈着・肝斑などにアプローチできます。

弱い出力で優しく照射するため、ダウンタイムも少なめです。

また、ピコスポットでは、衝撃波でシミの原因であるメラニン色素にダメージを与えることができます。

Qスイッチレーザーのナノ秒(10億分の1秒)より、ピコ秒(1兆分の1秒)というより従来の1000分の1のパルス幅で照射が調整できるため、炎症後色素沈着などになりにくいことが特徴です。

シミ治療で使用する機器②メソナJ

メソナJは、電気の作用で肌の奥へ美容成分を届ける「エレクトロポレーション」と呼ばれる施術に利用される機器です。

一説では、手で塗る300倍も美容成分が浸透するとも言われており、イオン導入では導入できない高分子の美容成分を浸透させることができます。

先ほど、ご紹介したマッサージピールと併用することで、くすみ軽減や美白に対して、さらに有効なアプローチが可能となります。

【美容ドクター解説】シミのよくある疑問

最後に、シミやターンオーバーの乱れにお悩みの方の疑問にお答えします。

シミで受診する目安は?

ーシミがあるのですが、すぐに受診するべきでしょうか?

そこまで急ぐ必要はありません。シミが目立つなど、美容の観点でお悩みの方は、美容皮膚科などでいつでもご相談いただけます。

なお、シミが「急に大きくなってきた」「​​急に増えた」「出血している」など、明らかにおかしいことがあれば、早めに一般皮膚科に受診していただきたいです。

ちょうどいい保湿とは?

ー保湿ケアのちょうどいい目安は、どのくらいですか?

適切なターンオーバーを保つためには、過不足のない保湿ケアが重要です。

保湿不足だと肌が乾燥しますし、やりすぎるとニキビなどの原因になる可能性もあります。

具体的にはお肌に「ティッシュが一瞬ついて、ハラッと落ちるぐらい」が、ベストな潤いバランスです。

お肌に保湿剤をつけた状態で試して、ティッシュが貼り付きすぎる場合は「塗りすぎ」、全く張り付かない場合は「塗りが足りない」と判断してください。

シミやターンオーバーの乱れに効く薬・サプリメントは?

ーシミやターンオーバーの乱れに効く、薬・サプリメントはありますか?

はい。クリニックでも機器を使用した治療と、薬・サプリメントを併用しています。

特にビタミンC・ビタミンE・トラネキサム酸は、この3つを飲むことで肝斑の改善率が良かったという発表もあったので、シミ治療する方には飲んでいただきたいですね。

ただし、トラネキサム酸は、喫煙されている方やピルを服用中の方などは、飲むことができないためご注意ください。

ビタミンC・ビタミンEのサプリメントは身近に購入できますが、クリニックで処方されるものの方が含有量・濃度が高い傾向です。

クリニックであれば、美容の観点からどのぐらい飲めばいいか、美容治療とともに判断できるため、効果に結びつきやすいですし、結果としてコストパフォーマンスも高いかと思います。

日焼け止めをこまめに塗る/塗り直すのが大変ですが、良い方法は?

ー日焼け止めを、毎日こまめに塗る・塗り直すのが大変ですが、何か良い方法はありますか?

スプレータイプが手軽で良いかと思います。

時間がない方でもすぐに付け直しができますし、手が汚れないのも大きなポイントです。

スプレータイプの日焼け止めは、べたつかない製品もあるので、おすすめですね。

日焼け止めは顔だけでなく、頭にも塗っていただきたいですが、スプレータイプなら簡単かと思います。

【シミに悩む方へ】皮膚科専門医からのアドバイス

シミを作りたくない方・正常なターンオーバーを保ちたい方は毎日のケアの積み重ねが大切です。

普段ケアをせずに、シミやたるみができてから治療すると、時間もお金もかかってしまいます。

それよりは毎日、日焼け止めを塗って、ピーリングなどの比較的受けやすい美容施術を定期的に受けるほうが良いかと思います。

私自身も365日、日焼け止めを塗って、夏場はUVカットのマスク・帽子を着用しています。

それから、ビタミンC・トラネキサム酸・フラーレンなど美白に効く成分は、毎日スキンケアに取り入れています。

20代から日焼け止めを毎日しっかり塗ることがとても大切です。30代以降はご年齢やお悩みに合わせたスキンケアをしつつ、ストレス発散や気分転換も美容にとても大切な要素なので、ご無理のない範囲でお一人お一人に合わせた最適な美容施術を取り入れるのがおすすめです。

日々の習慣がお肌の美しさを左右しますので、5年後・10年後のお肌のために、ぜひ実践してみてください。

お話を伺った医師

ビアンカクリニック
皮膚科専門医・皮膚科指導医 岩間 美幸 先生

日本医科大学医学部卒業後、国立国際医療研究センター病院、東京大学医学部附属病院 皮膚科、都立駒込病院 皮膚腫瘍科、山王病院 皮膚科を経て、2022年よりビアンカクリニックに在籍。
日本皮膚科学会・皮膚科専門医・日本美容皮膚科学会所属。化粧品成分検定1級。

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