顔にできる黒いシミの原因|治療法や予防法・病気のサインを解説
「突然顔に黒いシミができた」
「気づいたら顔に黒いシミができている」
突然、顔に黒いシミができた場合、「何か悪い病気なのでは?」と不安になる人も多いでしょう。顔にできる黒いシミは病気の場合もありますが、一般的なシミであることも多々あります。
そこで今回は、顔にできる黒いシミと考えられる病気の特徴を紹介。シミの場合は原因や種類別の対策方法についても触れていくので参考にしてください。
顔にできる黒いシミの原因
顔にできる黒いシミは、紫外線や摩擦などの外部からの刺激が原因である可能性が高いと考えられます。肌は紫外線など、外部から刺激を受けると防御反応としてメラニンを生成します。
通常、生成されたメラニンは肌のターンオーバー(新陳代謝)で古い細胞とともに排出されます。しかし、外部からの刺激によりメラニンが過剰生成されたり、何らかの理由でターンオーバーが乱れたりすると、メラニンが肌の内部に残留。蓄積したメラニンがシミとなるのです。
シミは種類などによって色が異なりますが、これはメラニンが蓄積する位置が関係しています。下の図のとおり、黒いシミは皮膚の浅い部分に存在することがほとんどです。
基底層で生まれたシミは、ターンオーバーにより皮膚の内側から外側に向かって押し出されるため、肌表面に近づくと「色が濃くなった?」と感じる場合もあります。
しかし、ターンオーバーが正常であればそのまま排出され色も薄くなるので、色以外に異常がない場合は改善に向かうと可能性が高いでしょう。
顔にできる黒いシミの種類
顔にできる黒く見えるシミの種類は大きく分けて次の4種類です。
老人性色素斑
老人性色素斑は紫外線ダメージの蓄積や加齢によってできるシミです。加齢に伴い頻出するシミではありますが、紫外線ダメージが蓄積することによってもできるため、紫外線をよく浴びる人であれば10代からでも見られます。
見た目は茶色~黒色の円形で、境界線がはっきりしているのが特徴です。顔や手、腕など、できる範囲に規則性はなく、大きさも数ミリ~数センチとまちまちです。
加齢においては止めようがありませんが、紫外線ダメージの蓄積は紫外線対策で軽減できます。そのため、まずは紫外線対策で予防を行うのがおすすめです。
また老人性色素斑にはレーザー治療も有効ですが、内服薬や外用薬などを使ったセルフケアによって改善効果も見込めます。
脂漏性角化症
脂漏性角化症は、前述した老人性色素斑を長期間放置したことによってできるイボのようなシミです。別名「老人性イボ」とも呼ばれます。肌色~黒色で大きさはバラバラ。シミの辺りにわずかな盛り上がりがあることから、他のシミとは見分けがつきやすいでしょう。
しかし、黒く盛り上がっている特徴からほくろと見間違えるケースも考えられます。ほくろは半球状に膨らんでおり、色が濃く柔らかいという特徴がありますが、脂漏性角化症はほくろよりも硬く、ボコボコしているという特徴を持ちます。
これらの特徴と照らしあわせてみると、見分けやすくなるでしょう。
脂漏性角化症は基本的には良性なので治療の必要はありませんが、少しでも異変を感じた場合は、皮膚科に相談するのがおすすめです。また、早めに治療を行えば治せるシミでもあるので、気になる方は早めに医療機関を受診しましょう。
炎症後色素沈着
炎症後色素沈着とはケガや虫刺され、ニキビ跡などによる炎症後にできるシミです。肌のターンオーバーが乱れることにより、メラニン色素が上手く排出されないことによって色素が沈着してできます。
色ムラがあり、輪郭がぼやけているのが特徴。ケガや虫刺されなどは年代問わず、また部位関係なく起こりえるので、炎症後色素沈着は全年代、誰にでもどこにでもできます。
炎症後色素沈着はクレンジングや洗顔時の摩擦によってできることもあるので、スキンケアをはじめ、いかなる時でも肌を強くこすらないように注意が必要です。
また、日常的に肌を触るクセがある人も要注意。摩擦により知らないうちに炎症を起こすこともありますし、炎症を起こしている箇所を擦って悪化させる可能性もあるので不必要に肌を触らないように心がけましょう。
また、紫外線によっても悪化するので紫外線対策は必須。ターンオーバーの正常化で薄くなるので、ターンオーバーを助けるL-システインを含む食品(肉類や小麦粉など)やサプリメントを摂るのもおすすめです。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
ADMは、灰色~青みを帯びた褐色で、米粒大ほどの大きさのシミです。20歳頃から見られることが多いシミですが、現在までに発生原因はわかっていません。他のシミと異なり肌の深い部分にできることからアザに分類されることもあります。
額や頬に好発し、頬の辺りには左右対称で現れるため肝斑と混同されがちですが、肝斑は薄茶色~茶褐色で輪郭がぼやけているなど、ADMとは色味や形状が異なります。
ADMは発生原因が不明なシミなので、どういった人がなりやすいか、また予防法もわかっていないのが現状です。ただし、レーザー治療を受けることで改善効果は見込めます。
シミは種類によってできる原因や対策が異なるため、本気でシミを治したいと思っているのであれば、まずはシミの種類を特定する必要があります。自己診断では種類を見誤る可能性が高いので、簡単にシミの種類と改善法がわかるこちらのシミ審断をぜひお試しください。
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顔の黒いシミの取り方・治療法
顔にできた黒いシミは、完全に取ることは難しくても薄くすることは可能です。取り方や治療法は次のようにシミの種類によって異なります。
シミの種類 | 内服薬 | 外用薬 | レーザー治療 |
老人性色素斑 | 〇 | 〇 | 〇 |
脂漏性角化症 | × | × | 〇 |
炎症後色素沈着 | 〇 | 〇 | 〇 |
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM) | × | × | 〇 |
老人性色素斑と炎症後色素沈着は主に内服薬や外用薬による治療法がとられます。脂漏性角化症、後天性真皮メラノサイトーシスでは、レーザーでの治療がメインになります。
内服薬
軟膏やクリームなどの外用薬やレーザー治療など、外からの働きかけによる対処が難しいシミには内服薬で改善を試みます。顔にできる黒いシミで、内服薬での改善効果が期待できるシミの種類は次のとおりです。
■内服薬で改善が期待できるシミの種類
- 老人性色素斑
- 炎症後色素沈着
次のようなシミ改善効果が期待できる成分が含まれている内服薬を服用することによって、身体の内側からシミの改善を図ります。
■内服薬に含まれる主な成分
成分 | 期待できる効果 |
ビタミンC | シミの元であるチロシンを活性化させるチロシナーゼの働きを抑え、シミの発生を防ぐ。さらに、濃くなったメラニンを薄くする効果も |
L-システイン | 体内から代謝を促す働きがあり、ターンオーバーを正常化してくれる。抗酸化作用もあるため、肌荒れ・ニキビなどシミの元凶も予防できる |
トラネキサム酸 | アミノ酸の一種。メラニンを活性化させるプラスミンという酵素を抑制する働きがある。炎症を抑える作用もあるので、ニキビやケガによるシミの予防効果も |
ビタミンE | 新陳代謝をサポートする作用があり、ターンオーバーの健全化に期待が持てる。皮脂膜を安定させるバリア機能もあるので、外からの刺激や紫外線から肌を守る効果がある |
内服薬は医療機関で処方してもらうほか、薬局などで市販の医薬品としても入手可能。服用の際は医師や薬剤師の指示に従い、用法・用量を守って使用しましょう。
外用薬
軟膏やクリームなどの外用薬を肌に塗ることで、シミの改善を試みる治療法です。外用薬が有効なシミの種類は次のとおりです。
■外用薬で改善が期待できるシミの種類
- 老人性色素斑
- 炎症後色素沈着
外用薬には下記の有効成分が含まれています。
■外用薬でシミ改善に期待できる成分
成分 | 期待できる効果 |
トレチノイン | ターンオーバーを促進する作業があり、角層に蓄積したメラニンの排出を促す |
ハイドロキノン | メラニン色素の生成を抑制する働きがある |
いずれもシミに効果的な成分ですが、場合によっては刺激が強いため、痛みや赤み、かゆみなどの副反応が出ることもあります。
また、ハイドロキノンは塗ったあとに紫外線を浴びてしまうと、皮膚がただれる可能性もあるので注意が必要です。
肌質・体質に合わない場合は、別の薬を処方してもらうこともできるので、遠慮せずに担当医に相談しましょう。
レーザー治療
レーザー治療ではレーザー光線を肌に当て、シミの原因となるメラニン色素を破壊。次のようなシミに効果的です。
■レーザー治療で改善が期待できるシミの種類
- 老人性色素斑
- 脂漏性角化症
- 炎症後色素沈着
- 後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
レーザー光線には種類があり、波長によってメラニン色素のみに反応するものや、皮膚の深部にある色素を除去できるものもあります。
いずれも異常な部分にのみ反応するので、正常な細胞を傷付けることはありません。即効性が期待できるレーザー治療ですが、次のようなデメリットもある点には注意が必要です。
【レーダー治療のデメリット】
- 人によっては多少の痛みを感じることがある
- 治療後は炎症後色素沈着が起きる
- 一時的にシミが濃くなることがある
- ダウンタイムがある
- 逆効果になることもある
レーザー治療も絶対的な方法ではないため、デメリットも加味したうえで担当医とよく相談してから、治療を受けるかどうかを判断しましょう。
顔の黒いシミを悪化させないための予防法
顔にできた黒いシミは悪化させないことが大切です。また、新たにできてしまうと顔全体がくすんでしまうため、普段から次のような予防を心がけましょう。
【顔の黒いシミの予防方法】
- 日焼け止めの適切な使用
- シミに効果的な美容液の使用
- 抗酸化作用の高い栄養の摂取
- 睡眠・運動不足の解消
シミができる大元でもある紫外線対策は必ず行いましょう。またシミに効果的な美容液も予防として有効です。
さらに睡眠や運動を意識してターンオーバーの乱れを整え、肌の酸化によりメラニンが増えることを防ぐ抗酸化作用の高い栄養素も積極的に取り入れましょう。
日焼け止めの適切な使用
シミの発生原因になったり、すでにあるシミを悪化させたりする紫外線。季節・天候問わず降り注ぐものなので、紫外線対策として常日頃から日焼け止めを使用する必要があります。
また、紫外線は窓ガラスも通過するため、外出予定がない日でも日焼け止めは塗っておくのがおすすめ。特に夏場は汗で落ちやすいので、こまめに塗り直すことも必要です。
日焼け止めを選ぶ際に目安となる数値は次の2つがあります。
- SPF
肌を赤く炎症させる原因であるUVB波をブロックする。数値が大きくなるほど防御時間も長くなる。シミ予防・対策で重視したい数値。勘違いされやすいが、数値の大きさは防御力の高さではなく、時間の長さ
- PA
肌の奥まで届いてシミの原因になるUVA波をブロック。「+」が多いほど効果が高くなるが、同時に肌への負担も増えるので注意が必要
数値が大きくなるほど紫外線からの防御効果も高くなりますが、同時に肌への負担も重くなります。そのため、生活シーンに合わせて最適な数値の日焼け止めを選ぶのがポイントです。
日焼け止めの品質保持期間は、商品にもよりますが未開封の状態で「3年以内」が目安です。ただし、開封済みのものは、劣化が進んでいる可能性が高いので去年買ったものでも使用しないことをおすすめします。
また、日焼け止めとあわせてサングラスや日傘、つばの広い帽子、アームカバーなどを利用すると紫外線からの防御力を高められるでしょう。
より詳しい紫外線対策について、下記の記事で解説しているのであわせてご確認ください。
シミに効果的な美容液の使用
老人性色素斑と炎症後色素沈着は、美容液によるセルフケア予防もできます。それぞれのシミに有効な美容成分は次のとおりです。
老人性色素斑に効果的な美容成分
- ビタミンC誘導体
- アルブチン
- トラネキサム酸
- プラセンタエキス
- ハイドロキノン
炎症後色素沈着に効果的な美容成分
- グリチルリチン酸
- ビタミンE
- セラミド
顔にできた黒いシミが老人性色素斑、または炎症後色素沈着の場合は、上記の有効成分が含まれている美容液がおすすめです。
ただし、美容液や化粧品はあくまで「予防」が目的です。使用することで今あるシミが改善する可能性は薄いことを留意しておきましょう。
一方、「グリセナジーMK(オゾン化グリセリン)」という美容成分は、シミを薄くする効果が認められています。もともとはアトピー性皮膚炎や床ずれの治療で活躍していた成分ですが、直接肌に塗布することでシミの原因であるメラニンの構造を破壊することがわかっているので、シミ改善に高い効果が期待できます。
シミに効く成分については、下記の記事でも詳しく説明しているので、化粧品や美容液選びの参考にしてください。
抗酸化作用の高い栄養の摂取
炎症後色素沈着など、一部のシミの予防として抗酸化作用の高い栄養を摂取するのも効果があります。シミの元となるメラニン色素が生成されるのは、肌が紫外線を浴びた際にアミノ酸が酸化し、チロシンとなるためです。
この酸化を防ぐ効果があるのが抗酸化作用のある栄養素というわけです。抗酸化作用の高い栄養素には、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどが挙げられます。
栄養素 | 代表的な食品 | おすすめのメニュー | 摂取時の注意点 |
ビタミンC | レモン・キウイ・イチゴ・アセロラ・ブロッコリー・パセリ | 蒸しブロッコリー | 一度にたくさんは吸収できないので、毎日継続して摂る |
ビタミンE | ナッツ類・アボカド・うなぎ・サケ | 鮭のムニエル | ビタミンCと一緒に摂る。油で調理する。過剰摂取は骨粗鬆症のおそれあり |
ビタミンA | トマト・かぼちゃ・ほうれん草 | ほうれん草のソテー、トマトスープ | 大量に摂取すると頭痛やめまい、吐き気などの中毒症状を引き起こす可能性があるため注意 |
シミ改善に効果がある栄養素やレシピの詳細は下記の記事に記載しているので、ぜひ参考にしてください。
睡眠・運動不足の解消
紫外線を浴びて発生したメラニン色素は通常、ターンオーバー(新陳代謝)により28日周期で排出されます。しかし、ターンオーバーが乱れてしまうと、メラニンの排出がうまくいかなくなるため、シミが生まれてしまいます。
ターンオーバーが乱れる原因はさまざまですが、睡眠不足や運動不足などによっても引き起こされます。
ターンオーバーは睡眠中に活発になるため、まずは十分な睡眠を取ることが大切です。最適な睡眠時間は人によってそれぞれですが、厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針 2014にあるように、6~8時間を目安に時間を確保するのがおすすめ。
また、質の高い睡眠を取るためには、リラックスできる環境づくりも心がけましょう。寝室の温度・湿度は高すぎても低すぎてもNG。就寝前は部屋を少し薄暗くして白っぽい照明は避けましょう。
また、睡眠に加えて適度な運動を行うことでストレスの発散ができるため、ターンオーバーが乱れる原因でもあるホルモンバランスも整えてくれます。
運動といっても激しいものではなく、会社までの行き帰りの道を遠回りしてみたり、エレベーターではなく階段を利用したりといった程度でも大丈夫。ただし、毎日続けることを意識しましょう。
病気の疑いがある要注意な顔の黒いシミ
顔にできた黒いシミが、実は悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞癌といった病気の一種だったということもあるので注意が必要です。それぞれの病気と、黒いシミを見分けるポイントは次のとおりです。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫(メラノーマ)とは、メラノサイト細胞ががん化することで発生する悪性腫瘍です。発生には人種差があり、日本人では10万人に1~2人の割合で発生する珍しい皮膚がんです。
ホクロが悪化した腫瘍と考えられており、左右非対称でギザギザした形をしています。基本的に黒色ですが色ムラができる場合もあり、良性のホクロとの見分けがつきにくい傾向にあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)は進行すると転移するので、早期発見・早期治療が肝心です。日本人の場合、足の裏や手のひら、手足の指や爪などの末端部分にできることが多いので、こうした部位に上記のようなシミや黒ずみ、ほくろのようなものができた場合には、一度受診してみることをおすすめします。
基底細胞癌
基底細胞癌とは、表皮の最下層にある基底細胞や、毛根を包む組織である毛包を構成する細胞から発生する皮膚がんです。明確な原因はわかっていませんが、紫外線や外傷、やけど跡、放射線が原因で発症していると考えられています。
発生初期は黒~黒褐色で盛り上がっているのが特徴で、次第に複数の黒点が集まり、円や楕円状に広がっていきます。痛みやかゆみはありませんが、進行すると中央部がへこみ、出血やかさぶたができることもあります。
7割以上が顔面や顔周りにできますが、身体のどこにでも発生。ただし、転移することは極めて稀です。命を落とすような病気ではありませんが、基底細胞癌を中心に周辺組織を破壊することもあるため、黒く盛り上がったほくろのっぽいものができた場合は、早めに受診するようにしましょう。
顔の黒いシミは種類に応じて適切な対処を
顔にできる黒いシミにはさまざまな種類があり、できる原因や対策もそれぞれで異なります。そのため、まずはシミの種類を知ることが大切。ただし、黒いシミは病気の可能性もあるので、自己判断は危険です。
医療機関を受診するかどうかを判断するためにも、まずは簡単な質問に答えるだけでシミの種類と改善方法がわかるこちらのシミ審断をお試しください。
あなたのシミを本気で治したいなら、3分でできるシミ審断を活用してみてください。
監修医師 コッツフォード良枝 先生 銀座禅クリニック医院長
・所属学会
日本抗加齢学会/日本麻酔科学会/日本オーソモレキュラー医学会/国際オーソモレキュラー医学会/
国際抗老化再生医療学会/臨床水素研究会/日本東洋医学会正会員
・経歴
2007年山梨大学医学部卒業、その後国際医療センター国府台病院で初期研修。研修後は日本医科大学麻酔科に入局し勤務。
その後大手美容クリニック勤務ののち、一般皮膚科、美容皮膚科などの勤務、院長勤務などを経て現在はGINZA Zen禅クリニック院長。
人が持つ本来の美しさを引き出すことをモットーに、たくさんの患者の様々な皮膚と真剣に向き合う。